優しい嘘
「これ以上私に構わないで」
私に構っても、きっと傷つくだけだから。
「私はあなたのことなんて、これっぽっちも想ってない」
だから、あなたも私のことなんて想わないで。
「私を縛り付けないで」
あなたに依存してほしくない。
「あなたとなんて、出会わなければよかったの」
そうすればあなたは、もっと幸せな人生を送れたのに。
「嫌い。嫌い嫌い大っ嫌い」
いっそ、嫌われてもいい。
「愛してなんか、いないから」
お願い、愛さないで。
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私がいなくなっても、あなたには笑っていてほしいから。
01 優しい嘘
【絶望症候群矛盾型】
過去となり果てた約束
僕が逝ったその時には、その灰を山の頂上から空へと撒いてください。
空からずっと、貴女を見守り続ける為に。
そう言うと貴女は、にやりと、その端正な唇を歪めて。
それは出来ない、と。
絶対に灰なんて撒いてあげない。
君の希望なんか叶えてやるもんか。
君が逝くときが、私の逝くとき。
二人して野垂れ死んで、微生物に分解されて、ぐずぐずに崩れていくんだ。
綺麗な死に方なんてさせてあげない。
そのかわり、ずっと一緒にいてあげよう。
そう言った貴女は、今はもう、何処にもいない。
貴女はすっと、僕の腕をすり抜けてしまった。
では、貴女が先に逝ってしまうならば、僕は貴女を追いません。
生きて、生きて生きて生きて、貴女を失った事を悔いましょう。
そう、あの時貴女に言ったけれど。
やっぱり僕は、耐えられそうにありません。
僕の約束を反故にして、貴女の約束を叶えに逝きましょう。
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果てた約束は、さてどちら?
02 過去となり果てた約束
【絶望症候群矛盾型】
伝わらない孤独と永遠
―――ねぇ、どうして泣いてるの?
「なぁ、何で笑ってくれないんだ?」
―――ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないよ。
「なぁ、何で喋ってくれないんだ?」
―――んもう、私の話聞いてないでしょ。
「俺の声、聞こえてんのかな?」
―――私のこと嫌いになっちゃったの?
「俺のこと、嫌いになった?」
―――そっぽ向いてないで、顔くらい見せてよ。
「なぁ、何で目ぇ開けないんだ?」
―――どうして気付いてくれないの?
「何で、何で死んじまったんだよ……」
―――私は此処にいるのに。
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かみ合うことのない二人の会話は、いつまでも、いつまでも―――。
03 伝わらない孤独と永遠
【絶望症候群矛盾型】
認められない感情
貴方の傍で生きたいと願った。
貴方の隣に在りたいと望んだ。
貴方に必要とされたかった。
貴方に求めてほしかった。
貴方に依存してほしかった。
貴方と共にいたかった。
ただ、それだけだったのに。
貴方は、それこそ認めてくれないのですか?
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私はずっと信じて貰えないのですか?
04 認められない感情
【絶望症候群矛盾型】
残酷なパレード
さあ、並びましょう?
仮面を被り
さあ、進みましょう?
足並み揃え
さあ、踊りましょう?
道化の如く
笑顔を作り歩調を合わせ、滑稽なまでに立ち振舞い
進みましょう、皆と共に
飛び出す事は罪
遅れた者に待つ罰
走るは異端、止まるは劣悪
我等を縛るは重たい鎖
さあ、並べ
自分を殺し
さあ、進め
周りに合わせ
さあ、踊れ
人形となって
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美しすぎるパレードは、あまりにも滑稽だ
05 残酷なパレード
【絶望症候群矛盾型】
擬似恋愛
「愛してるよ」
ああ、貴女の言葉はまた、俺を此処に縛り付ける。
心にも思っていない言葉で、俺を貴女へと惹きつける。
“愛してる。だから私から離れないでね”と。
貴女が俺に向けるのは、只の執着であり。
俺が貴女に抱くのは、嫉妬の入り混じった尊敬。
それは、愛と呼ぶにはあまりにも汚く、
そして、あまりにも強すぎる依存感情。
だから、俺も。
「俺も、貴女を愛しています」と。
貴女が俺を捨てられないように、呪縛にも似た言葉を吐く。
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それは、愛の名を借りた依存関係。
06 擬似恋愛
【絶望症候群矛盾型】
選ばれなかった道
選ぶことは、捨てること。
そう言ったのは、一体誰だっただろう。
捨ててしまった 。あの時、あの場所で。
貴方に導かれ、貴方と共に、この道を選んだ。
貴方に言われ抜け出した場所が、今はとても懐かしい。
貴方に言われ逃げ出した日常が、今はとても愛しい。
あの頃を振り返り、あの儘を望む。
きらきらと輝くあの頃の私は、今や只の“他人”と相成って。
それを捨ててしまった私を、嘲るかのように笑っているのに。
あの日、貴方と出会わなかったら、なんて、仮定法の世界を夢見る。
あの日、貴方と出会わなかったら、私はあの場所に在れたのだろうか
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捨ててしまったものは、どこまでも心の奥に突き刺さって。
07 選ばれなかった道
【絶望症候群矛盾型】
影すら一つにならなかった
まるで平行線みたいねと、君は僕に囁いた。
幸せ者だねとみんなが言った。
ずっと一緒にいられるなんて、と。
幸せ者だよと僕も返した。
ずっと一緒にいられるんだから、と。
幸せ者ねと君も返した。
ずっと一緒にいて貰えるなんて、と。
隣を進んではゆくけれど、決して交わることはない。
離れはしない、平行だから。
近付きもしない、平行だから。
それを幸いと喜ぶけれど、
せめて、一度くらいはその手を握りたかった。
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その一度が破滅へ向かうのが怖くて怖くて仕方が無いんだ。
08 影すら一つにならなかった。
【絶望症候群矛盾型】
幻想の中の君という存在
あのとき僕を縛り付けた鎖は、今も心の奥を燻って。
彼女は、当時のその姿のまま、僕の前に現れた。
「貴方もきっと、私のことを忘れてしまうのでしょうね」
何処か皮肉めいた調子も、
「今から五年、十年経って、貴方が大人になる頃には」
少し大人びた顔つきも、
「私がどれだけ貴方を想っても、貴方は欠片も私を想ってはくれないでしょう」
含み笑いをするようなその表情も、
「ですから……ですから私は貴方を呪います」
心に差した影も。
「貴方の心に、消えない傷を刻み付けます」
そして僕は、まんまと君の術中に嵌った。
どんなに足掻いても、君のことを忘れられそうにない。
これじゃあ君の勝ち逃げじゃないか。
再戦の余地さえまるでない。
完璧に僕の負けだ。
幻想の中の君からでさえ、僕は自分の心を取り返せないんだから。
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君がいなくなったこの世界は、まるで陳腐な作りモノだ。
09 幻想の中の君という存在
【絶望症候群矛盾型】
奇跡を願う夜
全てのあなたに祝福を
過去も現在も未来でも
全てのあなたに輝きを
あなたが楽しくいられるように
全てのあなたに勇壮さを
あなたが折れてしまわないように
全てのあなたに愛情を
あなたが幸せで在れるように
全てのあなたに、素敵な夜を―――――
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この言ノ葉の数々を、受け取ってくださった皆様に
10 奇跡を願う夜
【絶望症候群矛盾型】