+浜辺のうた+
某、ド田舎の小道を、俺は独り歩いていた。
母さんが死んで一ヶ月、母さんがいたあの土地に、あの家に耐えられなくなって、親父が引越しを決めたのが、今から丁度一週間前。
別にどうでもよかった。引越したいのならすればいい。それで親父の気が済むのなら。
あんな親父の顔を見るのはもう沢山だ。
親父は母さんが居なくなってからすっかり腑抜けてしまった。
ガキの頃から何度喧嘩しても勝てなかった、永遠だと思っていた敵も、こうなっては目も当てられない。
何もかもが変わってしまった。しかも、悪い方へ。
しかも、紆余曲折を経て越してきたこの村は、今まで居たところとは較べるにも値しないような田舎。
ゲームセンターまでは自転車を飛ばしても三時間はかかる。
だからといって地下鉄も無ければバスは一日に数えるほどしか来ない。
学校をフケてその辺をふらついていようものなら、どこかのオバサンに目を付けられ、次の日には村中の噂。
髪が茶色い人間だって俺と学校のアタマ気取った馬鹿くらいだし。
女だって田舎娘が無理やり背伸びしたようなのか純粋イモ娘くらいしかいない。つか未だにルーズソックス履いてるってのがまず論外。
全く、やってらんねぇ……。
と、しばらく歩いていると、目の前に一面の白と蒼が広がった。
こんな何も無い田舎で、俺が唯一安らげる場所。
時期外れだから人もいない、澄んだ綺麗な海。
此処に越してきて三日目、この村の様にやりきれなくなってアテもなく彷徨っていたときに見つけた砂浜。
それからは毎日この場所に来て、砂浜に寝転がって寝てみたり、漫画や本を読み漁ってみたりしている。
今日もそうやって退屈な一日を潰すつもりだった。
それなのに。
それなのに、今日は先客が居た。
麦藁帽子に白いワンピース、ビーチサンダルを履いた、俺と同じか少し下位の年の女。
確かに小春日和な今日、パーカーに学ランというスタイルでは、少し動くと暑ささえ感じてしまう程だ。
だからといって彼女のスタイルは時期外れ甚だしい。何処の中高生が11月に白ワンピース一枚で外出するんだ。
しかも、麦藁帽子とビーチサンダルのオプション付き。や、浜辺だけど。
かなり昭和の香りがする。今ってこういうファッション流行ってたっけ。80'sファッション?
しかもその女、海に何かを放り投げていた。
石を跳ねさせる遊びをやっているようには見えないし、環境破壊の最前線に立っている、というわけでもないらしい。あれは…小瓶、か?
何やってんだ?
俺が唖然としてその光景を見守っていると、一連の仕事を終えたらしい彼女が、ふとこちらに気付き、てしてしと歩いてきた。
サンダルが砂を蹴る音だけが辺りにこだまする。
「……何やってるの?」
いや、それはこっちの台詞だ、とは言えなかった。
近付いてきて分かったのは、やっぱりワンピースが凄く薄手だったことと、彼女の髪が凄く綺麗な鴉の濡れ羽色だったこと。
そして、彼女の肌がワンピースに負けないくらい、そう、不健康なくらいに真っ白だったこと。
まるで幻想の世界の住人のようだ。そう思える程、彼女はこの場所に不似合いだった。
「何、やってるの?」
うっかりまじまじと見つめてしまって、返事するのを忘れていた俺を不審に思ったのだろう。彼女はもう一度、小首を傾げ俺の顔を覗き込みながら問い掛けてきた。
って、近っ!
「べっ、別に……」
思わず一歩後退りしてしまった。
「そう」
俺の答えに満足したからか、彼女はそう一言放つと、またてしてしと海まで歩いていった。
ちょっと、俺、凄く居た堪れないんですけど……。
だからといって此処以外に行くアテがある訳でもない。
仕方が無いから俺も俺で勝手に読書に勤しむ事にした。
が。
「「……………………………」」
さっき向こうに歩いていった筈の女が、いつの間にか俺の正面にしゃがみ込んで、俺の読む本の背表紙をじいっと見つめていた。
「……………………なぁ」
「何?」
「何でこっち見てんの?」
「なんとなく」
「……………そうか」
「うん」
「「……………………………」」
「……………………なぁ」
「何?」
「何?じゃなくてだなぁ…その……」
相も変わらず彼女は無言で俺の読む本の背表紙を凝視している。
つか、さっきので察しろよ。何で見てんだとか言われたら視線逸らすとか何処かに行くとかするよな、普通。
あーくそっ!調子狂う!
俺は開いていた本に栞を挟むと、砂浜の上に置いた。
彼女の視線が本から俺へと移る。
「あのさ……何か俺に言いたい事でもあんの?」
「ううん、別に」
「じゃあ何でさっきから俺の方ジロジロ見てんの?」
「さっきも言った。なんとなく」
…………埒が明かない。
仕方が無いから俺はまず彼女の瞳をじっと見つめ返した。因みに俺はかなり目つきの悪い方だからこれだけで大抵の不良でもちょっと引いていく。
本当は女の子にこういう事言いたくないんだけど。
「あのさ、ウザいんだよな、見られてると。どっか行ってくれない?」
「……………………………」
あ、下向いた。くそっ、だから俺は言いたくなかったんだ。泣いても知らねぇぞ、俺……。
と、傍から見ると面白い程に動揺しているであろう俺に向かって、彼女は突然ぱっと顔を上げ、一言、こう言った。
「どうして?」
効いていなかった。
俺がこれ以上無い程の勇気を出して発した言葉は、彼女が放った一言の前にあっさりと敗北を喫した。
わざとだ、絶対。楽しんでるんだ、この女。
「ねぇ、どうしてウザいの?」
きょとんと首を傾げて俺を見つめる彼女。前言撤回。この女、只単にとんでもなく鈍感なだけだ。
はぁ…疲れる……。
「溜め息」
「え?」
何を唐突に。
「溜め息。幸せが逃げる」
「あ、ああ……」
誰の所為だ、とは言えなかった。訊いても「誰の所為?」とか訊ね返されるに決まっている。
つか、どうせ逃げるような幸せは持ち合わせてないし。
「「……………………………」」
そう思って俺が何も言わなかったら、彼女も何も言わなかった。
しかも真正面で向き合ったまま。かなり気まずい。居た堪れない。
痛い。沈黙が痛い。
「……………………なぁ」
先にこの空間に耐えられなくなったのは俺だった。
まぁ、俺が折れていなかったら彼女は一日中ああやって俺の方を見ていただろうけれど。彼女はそういう人間だ、絶対。
「何?」
何だろう。
いや、よくあるだろ、話振ったのはいいけど話題が無いとかそういうの。今まさにその状況。
どうしたものか……。
「ねぇ、何?」
「あ、ああ、ほら、あれだ。えーっと……いや、その格好。寒くないのかと思って」
「別に」
「そ、そうか」
「うん」
「……………………………」
「……………………………」
会話が終わってしまった。この女、常識に加えてコミュニケーション能力まで皆無なのか。
えっと…他に話題、話題……って何でこんなに気ィ使ってんだ俺。あ、そうだ。
「じゃあさ、あれは?さっき海に何か投げてただろ?あれ、何やってたんだ?」
「手紙」
「手紙?」
あの小瓶が?
「そう。手紙」
彼女は事も無げにそう言った。
どうやら彼女と俺の間には手紙というものに対しての見解の相違があるらしい。
俺は手紙というモノは封筒に入れてポストに投函するものだと思っていたのだが。
まぁその辺りも話してくれるだろうと続きを待ってみても、一向にそういう気配が見えない。
不思議に思って彼女の方を見てみると、彼女は話すことは全て話し終えたという顔で指と爪の隙間に入り込んだ砂と格闘していた。
そうか。彼女は訊かれた事に答えるか自分が気になった事を口にするか以外に気がないのだ。
……訊けばいいのか。俺に訊けというのか。いや、訊くけどさ。
「……………………なぁ」
「何?」
何度目になるだろうかこの遣り取り。
「手紙。何でわざわざ小瓶に入れて流したりするんだ?夢や浪漫を追うようなタイプには見えないんだけど」
「そう?」
「え?」
「見えない?私。夢や浪漫を求めてるように」
え?嘘、追ってたのか?あの小瓶はお外の国の王子様宛てだったのか!?
ちょ、俺さっき遠回しに「似合わない」みたいなことを言った気が……。
ヤバい、機嫌を損ねてしまったかと一瞬身構えたが、彼女は特に素振りも見せず、相変わらず俺の前で砂と格闘していた。
心なし笑っているようにさえ見える……って、え?笑って、いる?
「もしかして……冗談、だったのか、今の」
「…………そうだけど」
あ、ちょっとだけ赤くなった。
「……ぷっ」
「何?」
「いや、冗談。言うんだなぁって」
「ダメ?」
上目遣いで問いかけてくる。何故かそれが似合いすぎて似合わなくて、俺は盛大に吹いてしまった。
「なんで笑うの?」
更に不思議そうな表情になる彼女。そして笑いが止まらない俺。どうやらツボに入ってしまったらしい。
駄目だ、これは5分は止まりそうにない。
「落ち着いた?」
「ああ……悪い。ケホッ」
5分どころでは済まなかった。
正味15分、これでもかという程笑ってしまった。頬がぴくぴく引き攣って何ともいえない表情になっているだろう。
過呼吸状態に陥ってしまって酸素濃度が上がりすぎたらしい。視界が微妙にセピアがかって、まるで夢の世界のようだ。
夢、か……。そうそう、夢といえば。
「本当のところ何だったんだ?夢や浪漫じゃないとすれば、それなりの確固たる目的を持ってやってたんだろ、アレ」
「……けられないから」
「え?」
「ポストに入れても、届けられないから」
「いや、ポストに入れてからは郵便局員の仕事だろ?別に……」
「ううん、ダメ。お願いされたから」
だったら尚更海に投げちゃ駄目なんじゃないだろうか。絶対に届かないぞ、あんなのでは。
うーん……やっぱり謎だ。
俺が頭を捻っているのを見て、彼女はそれでも満足そうに海を眺めて、今度はいそいそと砂の城を作り始めた。
さっき爪の砂を取ったばかりなのに。案外ガキ臭いところがあるとみた。その年で砂の城って位だし。
しかし彼女はとても楽しそうに城造りに興じている。
…………………………………。
くそっ!ガキ臭くて何が悪い!
数秒前の自分の思考を跳ね飛ばして、俺も城の造営を手伝う事にした。
ぺしぺしぺし。
ぺたぺたぺた。
何故か、酷く懐かしい。
ぺしぺしぺし。
ぺたぺたぺた。
そうか、そうだ。10年、もっと前か。母さんと一緒に作った、砂の城。
バケツに海水をたぷんたぷんになるまで入れてきて、それを少しずつ使って。
やっと完成した時には、もう海と太陽が接していた。
母さんがもう暗くなるから帰ろうと言っても、それでも、折角作ったモノを置いて帰りたくなくて駄々をこねた。
そのうち夕陽が海にすっぽりと収まって、ついさっきまで綺麗な橙色をしていた海が真っ黒に染まり、怖くなってすごすごと家に帰ったのだけれど。
あの砂の城は、あの後一体どうなったのだろう。
波や風や雨にさらされ流れてしまったのか、それとも悪ガキ共に崩されてしまったのか。
何にしろもう無くなってしまったソレに思いを馳せながらも、またソレと同じモノを作ろうとしている俺はきっと只のバカなのだろう。
それなのに。
ぺしぺし、ぺたぺた、と。
あの頃のように、あの頃とともに、砂の城を築き上げていく。
どうせまた崩れてしまうのに。
どうせまた、跡形も無くなってしまうのに。
ふと前を見てみると、彼女は本当に楽しそうな顔で砂の城を組み上げている。
それは、彼女と出会った時から見たどれとも違うような、もしくは全てを合わせたような表情だった。
傍若無人で鈍感で、世間知らずでガキっぽくて、何か色々とよく分からない女だけど。
きっと、今まで出会ったどんな人間よりも、ずっと真っ直ぐなんだろう。
そう思わせる、表情だった。
「よっ、と……これで、完成か?」
最後にぺしっと側壁を叩いて、俺は数時間振りに彼女に話しかけた。
かなり長い間黙々と作業をしていたらしい。ずっと曲げていた膝が哂っている。
時間が過ぎるのを忘れていた、というのは、余程楽しかったからなのだろうか。
それとも、沢山の事を考えられたからだろうか。
「うん。ありがと」
「いや、礼言われるような事はやってねぇし」
「ううん、そんなことない。楽しかった」
「それは…俺の、お蔭なのか?」
「うん」
「そうか……じゃあ俺も。有難う」
「楽しかったの?」
「まぁ、それもあるな」
「他にもあるの?」
「別にー」
「……そう」
俺が答えないでいるのを見て、彼女は少しだけ不満そうな間を作った。
別に、言う必要は無い。言っても彼女は興味を示さないだろうから。
たかだか俺の問題の、その答えを見つけられたのが、彼女のお蔭だっただけだ。
たった、それだけの話。
どうせまた崩れてしまうけれど。
どうせまた、跡形も無くなってしまうけれど。
それでも。
彼女は砂の城を築き上げた。だから。
「……有難う」
「さっきも聞いたけど」
「ああ。何となく言ってみただけだ」
「……そう」
彼女はにっこりと笑った。
俺は少し気恥ずかしくなった。
「……手紙」
「え?」
「届くと、いいな」
気恥ずかしさを誤魔化すように、俺は話題を転換した。
「届くよ」
何故か自信満々な答えが返ってきた。その根拠が何処にあるのか俺には解せないけれど、彼女がそれでいいのならいいのだろう。
そう思って俺が何も言わなかったら、彼女も何も言わなかった。
沈黙が続いたけれど、特に居た堪れなくはならなかった。
「あー……暮れてきたな」
冬程とまではいかなくとも、流石にこの時期になると陽が落ちるのが早い。
辺りの空間にはもう橙と紫とが混在していて、空気もすっかり冷え切ってしまった。
「なぁ、本当に寒くねぇの?」
「うん」
「そうか」
どうやら彼女の肌は特殊防寒皮膚らしかった。
どちらにしろ、そろそろ良い子は家に帰る時間だ。こんな田舎で滅多な事があるとは思わないけれど、最近は物騒だし。
「家、何処だ?送っていくけど」
「そんなのいいよ」
「いや、何かあると俺の寝覚めが悪いし……」
「うん。でも大丈夫」
「……そうか」
「うん」
「……………………じゃあ、俺、帰るな」
「うん」
「じゃあな」
「さよなら」
「ああ」
某、ド田舎の小道を、先程とは逆に辿っていく。
後ろを振り向くと、彼女はめっきり冷たくなった海風に吹かれながら、風に浚われていく砂の城を見つめていた。
麦藁帽子をかぶっているのと暗いのとで、表情は分からなかったけれど。
少し、心臓が圧迫された気がした。
+
次の日、学校に行った帰りに、あの海辺に寄ってみたけれど、砂の城はもう何処にもなかった。
彼女ももう、何処にも居なかった。
やっぱり少し苦しくなったから、俺は早々に家に帰って、やはりどこか元気の無い親父と飯を食った。
そして次の日、俺は必死に自転車で走っていた。
「そうだ、なぁ、あの海辺で流したものって、何処に流れ着くか分かるか?」
そう、飯を食いながら、親父に駄目もとで尋ねてみたら。
どうやらあの辺のゴミが隣町に流れていざこざが起きているらしいという話を聞いた、と。
という事は、一昨日のあの小瓶も。
『届くよ』と、彼女はそう言ったけれど、流石にそれは無理な話だ。海に放った小瓶が目的の人の許へ届くのならば、郵便局には閑古鳥が鳴くだろう。
だったら、彼女の変わりに俺が届けてやろう、と、そう思ったのだ。
お節介かもしれないけれど、それが俺なりの彼女へのお礼だ。
隣町に着いてその辺のおばさんに尋ねたら、目的の場所はあっさりと見つかった。
確かに其処には、空き缶やペットボトル、花火の燃えカスなんかが沢山打ち上げられていた。
ぐるっと辺りを見回してみても、求めているものは見当たらない。まぁ、小瓶だしな……。
腕まくりをして、ゴミを一箇所に固めながらの発掘作業を開始する。
流されたのが一昨日だから、もしかしたらまだ漂着していないのかもしれない。
でも、俺はゴミを除けて小瓶を探す。
傍から見たら熱心に浜辺を掃除している若者に見えるかもしれない。まぁそれもそれでいいだろう。
そんなことを考えながら、小一時間ゴミを漁っていると。
「あった………これ、だよな……」
遠くから見ただけだから確実にそれとは言えないけれど、俺はそれらしい小瓶をひとつ、ゴミの中から見つけ出した。
流石に中を見るのは忍びないけれど、見ないと誰に宛てたものか分からないから……。
そう言い訳をして、蓋をきゅぽんと開ける。きちんと密閉されていたらしく、海水が入り込んだ様子は無い。
瓶を2,3回軽く振ると、かさり、と、小さく折り畳まれた紙きれが手の上に落ちた。
指先でそれを開く。
と。
そこには、たった一言、俺のよく見知った字で、
“見つかった?”
と、そう書いてあった。
俺のよく見知った字――母さんの、字だ。
大人の癖に女子高生が書くような丸文字で、少し読み難い。
小学生の頃、音読カードにその字で感想を書いて貰うのが恥ずかしくて、もっと綺麗な字で書けとせがんだこともあった。
その字が、今、俺の手の中に在る。
ああ、そうか。
きっと彼女は、母さんが生きていた頃に、これを俺に渡すように頼まれたのだ。
俺が此処に探しに来る事も想定内だったのだろう。だからあんなに自信満々だったのだ。
でも、直接渡せばいいものを、どうしてこんな回りくどい方法をとったのだろう。
俺にあれこれ訊かれるのが嫌だったのだろうか。有り得る。只でさえ会話らしい会話をしない少女だったから。
そう、自分を納得させようとしたけれど。
どうも、俺の想像力はそんな現実に沿った答えを認めさせてはくれないらしい。
彼女は天国からの遣いで、荒れていた俺を見かねた母さんに頼まれて、俺の前へと現れたんじゃないだろうか。
そうして、砂の城と共に、俺への答えを置いて帰っていった。
そりゃあ直接なんて渡せないだろう。まさか天国からの遣いだなんて言える筈が無い。彼女は嘘を吐けなさそうだったし。
なんて、俺もガラでもなく夢や浪漫を追ってみることにする。
その方が彼女にはお似合いだ。
夏場でもないのに白ワンピースに麦藁帽子、挙句の果てにはビーチサンダル。
髪は綺麗な鴉の濡れ羽色、肌はワンピースに負けないくらいに真っ白で。
傍若無人で鈍感で、世間知らずでガキっぽくて、何か色々とよく分からない女だったけれど。
俺の求めていたものを、いとも簡単に遺していった、あの、不思議で幻想的な彼女には。
そう、見つかった。彼女のお蔭で。だからもう、心配は要らない。
砂の城は消えてしまったけれど、小さな砂粒はずっとずっと巡ってゆくから。
+ + +
ということで、『浜辺のうた』でした。「あしたはまべを〜」とは無関係。あの歌も好きですが。
バットエンド症候群脱出。ちょっといいお話を目指し撃沈。
単語で喋る不思議少女と不良少年。彼等が織り成す不思議な秋の一日。
橙と紫の間の色と、深くなった紺。其処に佇む真っ白な肌とワンピースの黒髪少女。浪漫です。
私にしてはちょっと長めの短編。スクバの長さが驚異的に短い気がします。
それにも関らず此処まで読んで下さって、本当に感謝感謝です。
castles in the air:空想, 幻想
彼の仮定は、やっぱり空想でしかない訳ですが。
偶には空想の世界に浸って、夢を見てもいいですよね?
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