++空++
朝++
いつもと何ら変わりの無い澄み切った蒼い空の下、彼女は其処に佇んでいた。
彼女は只、上空を見つめて立っていた。他に何をする訳でもなく、只、首を傾けて。
その立ち姿は凛として美しく、否が応でも人目を惹きつけた。
彼女は何をしているのだろう。
俺はその不思議な人物に目を奪われたまま、暫く呆然としていた。
こうしていると酷く落ち着く。だが反面、酷く胸が痛んだ。
理由は判らない。何故か哀しかった。
彼女を見ていると、苦しくなる。
俺はそっとその場から立ち去った。
++昼
クダラナイ授業を窓際の席で軽く聞き流しながら、俺も空を眺めてみた。
彼女があんなに真剣に見ていたモノを、俺もしっかりと見てみたいと思ったからだ。
この席にいれば窓から外を眺める事も少なくないのだが、こんなに真面目に空を眺めるのは初めてだ。
けれど、幾ら見ても、眼前には一面の蒼と少しばかりの白が在るだけだった。
彼女は一体、何を想って空を見ていたんだろう。
そう考えながら、俺はふと違和感を感じて空から目を離した。
何て事は無い。朝のあの時のように少し苦しくなっただけだ。
夜++
見上げると満天の星空。俺はその中を足早に帰路に着いた。
すっかり遅くなってしまった。これでは・・・。
朝と同じ道を駆け抜け、あの場所へ。
其処に、彼女はいた。
闇の中月明かりを浴びて、彼女は朝と同じく其処に立っていた。
朝と同じく、上空を見つめて。
俺は彼女に近付いて、思い切って手を伸ばした。
ワケを、訊く為に。
++空
「空ってさぁ、『から』とも読むでしょ?」 彼女は言った。 「虚空。なぁんにもないの。からっぽだね」
「見上げても、何処までも蒼が広がってるだけ。だから『から』なのかな?」
「・・・そうかも、しれねぇな」 俺は答えた。
しかし彼女は元々俺の答えなど求めてはいなかったかのように続けた。独り、静かに。
「だから、なんだろうね。空を見てると、『あぁ私、独りぽっちだ』って、そう思う。だから私は空が好き」
「独りきりに、なれるから」
「でもさぁ」 俺は彼女の言葉を遮った。 「そんなの、淋しいだろ?」
彼女は静かに微笑んでいた。
++後記++
はい!そんなこんなで3500hitリク『空』で御座いました。如何でしたでしょうか。
校正のオニーサン曰く「謎の多い作品」らしいですけど、皆様の心に何か残せれば幸いです。
お気に入りなのは夜と空の間、なんて言ってみたりします。
では!リクは『空』という事でこんな感じになっちまいましたが、良かったでしょうか秋星様(ドキドキ)。
煮るなり焼くなりお好きにしてやって下さい。
何時もの如く返品大歓迎ですあはははは(・・・・・・。)
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