2+紅花繚乱





「……良かったです」

「はい?」

「貴女が死ぬ前に、お話が出来て」

少し、というかかなりずれていたような気もするけれど。

それでも僕は、彼女に沢山の思考を貰った。だから。


「ですから、有難う御座いました」

「そう言ってもらえると光栄です」

「……本当に、逝くんですね」

「ええ」

「今更止めても無駄、ですよね?」

「よくご存知で」

「50分近く話していればそのくらいは判断出来ますよ」

「そうですか……それでは、さようなら」

さようなら、と、僕が返す前に、彼女の身体がふっと前傾姿勢になった。

物理の法則に従ってのことだろう。そのまま僕の視界から彼女が消える。



ああ、そういえば一つ、ツッコミ損ねたことがあった。

屋上の扉を開きながら、僕は一人呟いた。

「知ってましたか……?思い出って、思い出すからそう呼ばれるんですよ」



彼女が僕との会話をを思い出すことは、もう無い。

でも、僕は彼女のことを忘れられないだろう。

地上へと続く階段を下りながら、僕は彼女を想う。



彼女の最期に付き合ったのも僕なんだから、せめて、最初の弔いの花も僕の手で。



+++



アスファルトに散った紅と、澄み渡った空の青のコントラストが、僕の目に焼き付いて離れない。










+++++
(きっと)バッドエンド。






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